3021 「プロジェクト・メタファリカ始動」
3026 ソル・マルタ設計図完成
3027 ソル・マルタがメタ・ファルスの地で組み立て開始
3032 レーヴァテイル2号体「フレリア」誕生
3038 フレリア、ソル・マルタへ。ソルマルタ、天高く浮上
3058 Dセロファンの効果判明 フレリアとの擬似再会
3075 インフェル・ピラ構想がパスタリアで生まれる
3080 新約メタファリカ理論完成
3150 インフェル・ピラ、ファーストステージ計画開始
3162 インフェル・ピラ完成するも、正常に動かず失敗
3215 新緑の大地宣言、メタファリカ大聖堂の建設開始
3256 大鐘堂庁が「インフェル・ピラ」計画の再構築を発表する
3264 インフェル・ピラ計画の開始
3275 「インフェル・ピラ」設計着手
3291 初のインフェル・ピラ依存体「I.P.D.」が転写される
3295 14代目御子に「ネネシャ」任命
3298 初代澪の御子が誕生する
3299 大鐘堂により、御子が「焔」と「澪」の2人となることを公表
3308 新しいヒュムノス律「新約パスタリエ」がプログラムされ始める
3310 メタファリカα版完成
3313 合体メタファリカを謳うも失敗。神との戦争に突入する。ネネシャ死亡
3315 神との戦争に勝利する
3319 神と人々との契約条項が成立する
3344 I.P.D.暴走による、パスタリア市街地での大惨事発生
3345 I.P.D.と暴走の因果関係を見つけるためのプロジェクトが結成
3357 ラクシャクからメタファリカ信者がミント区を開拓
3394 I.P.D.情勢が悪化する
3424 ネオエレミアからの来訪者、インフェル・ピラを乗っ取り支配権強奪
3435 時の御子イリューシャ、エレミア人殲滅
3441 対外的防衛構想制定
3745 32代目御子「アーシェ」、14歳御子になる
3748 HC「ハイバネーション」完成
3751 教皇急死、アウフマン摂政が政治的トップに
3753 御子アーシェがI.P.D.暴走によってエナ宮殿で死去
3745 カナカナ突堤I.P.D.襲撃事件
3260 33代御子「クローシェ」、5歳御子になる
3761 チェスター大鐘堂離反、神聖政府軍を創設
3771 大規模陥没 パスタリアのみならず、リムの一部も欠損
3772 ラクシャク保養地襲撃事件発生
「呪われし大地」メタ・ファルス。人々はこの大地をそう呼んだ。
草木もなく、土さえもない、大地と呼ぶことさえはばかれるような無骨で巨大な鉄の塊の上に、わずかにかすかに根付くほんの少しの資源を糧に、人々は刹那の時を生きる。
人は、生き物は、全てはやがて死に至り、残酷な鉄を覆うほんのわずかな土となる。時には死ぬことさえ自覚する間もなく、大地の陥没によってはるかな雲海の底に消失することさえ日常となっている無慈悲な大地。
全てを否定してしまいたくなるほどに過酷な環境に生れ落ちた人々は、緑あふるる理想郷メタファリカという、誰も目にしたことがない、古い文献にさえ残っていないような、命に満ちたりた夢世界を信仰として生きてきた。
全てに優しくされない残酷な環境で、全てに優しくされる満ち足りた世界という、皮肉とも自嘲ともいえない言葉でささやかれながら、しかしその性根では誰もがそれを待っていた、望んでいた、欲していた。
誰もが皆、誰かに優しくできる世界を夢見ていた。
枯れた大地の嘆きから生まれた信仰は、やがていくつもの論争を生む。
論争はやがて人々に拳を握らせ、握り締めた拳は剣をとり、振るわれた剣は肉を切り裂き、傷つけられた肉からは血が流れ、やがてその血はメタ・ファルスの地の上で川となる。川は歴史となり、歴史は別の論争を生み、そして川は時を追うごとに太く長くなっていく。
そうして、夢から生まれた美しき信仰は、血の川と成り果て呪われし大地の全て覆いつくす。
人は、それでも生きていた。
刻々と広く深くなっていく川の中でもがきながら、それでも人は理想郷を探していた。
探すための過程によって、より己を溺れさせることになろうとも。
アルトネリコ第2塔管理施設ソル・マルタ、アルシエル球の間。
不思議な七色の輝きを放つ金属と、空気のように透明でしかし表面に傷一つさえない不思議なガラスで覆われた、神のための神聖な舞いの台。
若葉のような輝きの羽を持つ少女フレリアは、その部屋の端に立ち、じっと己の足元の向こうを見つめていた。
彼女の眼下には、砕かれた惑星アルシエルとそれを覆う死の雲海はかつての地表であったもの。はるか昔、一握りの国同士の覇権争いによって、この惑星はその形でさえも砕かれてしまっていた。
人々は逃げ惑いながら雲海にぽつんと浮かぶ、ただの鉄の塊に逃げ込んだ。そこには土も水も、およそ生命が生きていく上で必要となるであろう資源は何もない、本当にただの鉄の塊だったのだが、それでも人は生き残らんと必死に逃げ込んだ。
争いから逃れるために逃げ込んだ世界で、人は再び争いを繰り返す。生きるために。日々を心安らかに生きるために。争わずにすむ世界を夢見て、結局争うのだ。
ほんの数日前までこの間も神々しき舞台も戦場だった。それも、この世界に細々と生きる人全ての生命に関わる、残酷で重大な戦いが行われた。
この塔の管理者であるレーヴァテイル・フレリアの、数百年にもわたる寵愛を受けて育まれた、ささやかで、神聖で、全ての生命に優しいその森は、無礼な闖入者の手によって存在を書き換えられ、巨大で、醜く、邪悪な生命にゆがめられて、訪れたものに牙をむいた。
殺伐とした世界に少しでも優しさが宿るようにと、祈って歌ったのがきっかけだった。森で生まれた種は、リムにおりて芽吹き、実を成す。常に傍観者であったフレリアの、下界へのかすかな介入。
かろうじてその醜い生命は倒されたものの、しかしかつての優しい森はもう戻らない。
人は優しさを求めていたはずなのに、その優しさは人の手によって砕かれた。
「何を考えているんだ、フレリア」
立ち尽くすフレリアの脇から青き狼がのそりと身を乗り出して、彼女の顔を覗き込む。
「エンジャ」
「あの森のことは残念だが、もう終わってしまったことだ」
いつものように淡々とした口調で、フレリアを慰めてくれる。姿が変わってしまっても、時間が何百年経っても変わらないその様子に、フレリアの顔にようやく笑みが生まれた。
「うん、そうだね、わかってる。でも、あの森はエンジャの方が気に入っていたんじゃないの?」
「フレリアの作った森だからな」
なんのてらいもない言葉に、フレリアも嬉しくなって「ふふっ」と声に出して笑う。もともと幼い顔立ちの彼女の顔に、子供のように無邪気で純心無垢な笑みが浮かぶ。
「残念だったけど、また作るよ。ううん、もういらないかもしれないね」
彼から視線を外し、再び足元をみやる。その視線の先には、雲海に漂う小さな木切れのような、土色と緑に覆われた影が見えた。
「メタファリカが出来たから」
「そうだな。森林浴を楽しむには格好の場所だろう」
メタ・ファルスの民の悲願であった夢の理想郷を前にしても、いつもと変わらぬ実利的な考えを崩さない。
「エンジャらしいね」
「そのメタファリカを見て、何を考えていたんだ?」
「色々。そう、色々考えてた」
自身が生まれてからすぐにここに配置された。音を力に変換し、歌に力を与えて人々の役に立つようにと計画されたアルトネリコ第2塔は、メタ・ファルス地方にあった。この地で生まれ育ち、悠久の時の流れに身をゆだね、塔を少しずつ作りながら、この地の民の姿を見つめ続けていた。
理想郷メタファリカ。全ての人々が日々を努力しながら、明日に希望を持って眠りにつける場所。
この地の人々は、はるかな昔からそんな夢物語のような大地の夢を通して、創意工夫し切磋琢磨しながら生きている。
その過程で血も流れた。涙はもっと流れた。命は流れるように消えていった。
メタファリカという夢こそが、人々を過去に縛り、しかし人々を明日へと押しやる力となる。ここでは、そんな不毛ともいえるやりとりを延々続けてきたのだ。
そんな人々の姿を、この天上の地でずっと見つめていた。何も言わず、何も指し示さず、何も導かず、ただずっと眺めていた。
今もそうしているだけだ。
「でもね、エンジャ」
芽吹いたばかりの若葉のような輝きをたたえる瞳が、わずかに細められる。
その視線の先には、何度も何度も人々に希望と絶望を与え続け、血と涙と命の瓦礫の上にそびえ立つ伝説の大地があった。
年表、初回特典冊子より一部抜粋